存在の耐えられない若さ

大人のまねして飲むコーヒー

苦いのがまんする顔がおかしかった

-- WHITE ALBUM 2「恋のような」より

 

大学にいる人間を見て「若いなぁ」と思うようになったのはいつからだろうか。

 

僕は基本的に自分と同年代、あるいは上の世代の人間としか絡むことがない。そのため、周りの人間を見てフレッシュさを感じることは特にない。

もちろん街で見る中高生はずっと若く見えるのだが、彼らはたいてい制服を着ているからその効果もあるだろうし、そもそも本当に年齢が離れているのだから特に違和感はなかった。彼らは僕にとっては若く感じて当たり前の対象なのである。

異変を感じたのはここ最近。大学の学食に行くと、周りの人間がはっきり若いと感じるようになった。これはなかなかショックだった。

自分や自分の周りの人間と比べると、彼らのする行動や彼らの持つ表情は全然違っている。たとえば僕には、講義後に講義が一緒という理由だけでたいして親しくもないグループでご飯を食べにいく体力も、あんなに無邪気に笑えるような感性ももう残っていない。もちろんこれは僕という人間の性質もあるだろうが。しかし、僕も大学に入った頃は、程度は違えど彼らのように楽しく生活することができていたような気がする。

よく考えてみると、今大学にいる人間で一番若い人間は、なんと僕が高校生だった時にまだ小学生だったような人間なのである。そして僕はこの「存在の耐えられない若さ」を感じて学食を後にする。ここではもう、生きられない。

最近になって定期的に自分や自分の周りの同年代の人間の数年前の写真を見る機会がある。写真の中にいる彼らには、僕が今学食で周りの人間に感じる若さがある。これは同時に、僕らが失ってしまったものでもある。

こんな話を自分よりも更に上の年代の人にすると、大抵その歳で何を言ってるんだと笑われる。ただ、きっとあっという間に、自分もこうして彼らのような中年男性になっていくのだろうなと思う。それは別にいいのだが、苦いコーヒーを大人の真似して飲んだときの表情を彼女に笑われる、みたいな体験を若いうちにできなかったのは残念。